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東京地方裁判所 平成3年(行ウ)22号 判決

原告

池浦吉衛(北海道岩見沢市)

被告

特許庁長官

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求

被告は、原告に対し、出願番号昭和53年特願第209869号の特許権をすぐ交付せよ。

第二事案の概要

一、本件は、原告において、昭和53年9月28日、実用新案登録出願(出願番号昭和53年実願第133767号)をし、その後昭和60年9月21日、特許法46条1項本文の規定に基づき右出願を特許出願に変更したが(出願番号昭和60年特願第209869号)、右特許出願について被告が特許権を交付しないのは特許法1条、51条、同法施行規則28条等に違背する等として、被告に対し、特許権をすぐに交付するよう求めた事案である。

(なお、原告は、「請求の趣旨」において、右変更に係る特許出願の出願番号について「昭和53年特願第209869号」と主張とているが、出願の変更の場合には特許法46条6項の準用する同法44条2項の規定により出願日がもとの出願の出願日に遡及することから、このように主張しているものと理解される。)

二、争いのない事実及び弁論の全趣旨により認められる事実

1. 原告は、昭和53年9月28日、考案の名称を「木造ビニールハウスと木造家屋と金属製ビニールハウスと金属製車庫と戸と足場の金属製部分品」として、実用新案登録出願(昭和53年実願第133767号、当初出願)をした(争いがない)。

2. 原告は、昭和57年12月9日、特許法46条1項の規定に基づき、当初出願を特許出願に変更しようとしたが、特許法施行規則23条所定の様式によらず、通常の特許出願の様式で出願したため(昭和57年特願第217416号)、当初出願とは全く別個の特許出願として取り扱われた(弁論の全趣旨)。

3. 昭和58年2月18日、当初出願につき拒絶査定がなされ(争いがない)、右拒絶査定謄本は、昭和58年3月29日に原告に対して発送され、そのころ原告に到達し、その後、原告から審判請求等の不服申立てもなかったため右拒絶査定は確定した(弁論の全趣旨)。

4. 原告は、昭和60年9月21日、特許法46条1項の規定に基づき、再度当初出願を特許出願に変更しようと、本件特許出願(昭和60年特願第209869号)を行った(争いがない)。

5. 被告は、昭和60年12月9日、本件特許出願について、特許法46条に規定する期間を経過してなされた出願であるとの理由で、出願不受理処分を行った(争いがない)。

6. 原告は、昭和61年2月7日、右出願不受理処分を不服として、被告に対し、行政不服審査法による異議申立てをしたが、被告は、昭和63年4月12日、原告の右異議申立てを棄却する決定をし(争いがない)、その後右出願不受理処分は確定した(弁論の全趣旨)。

第三当裁判所の判断

一、本件訴えは、本件特許出願について特許権を交付することを求めるものであるが、これは、特許庁長官である被告に対し、本件特許出願について特許をすべき旨の査定又は特許権の設定の登録という行政処分をなすべきことを求めているものと解される。

ところで、行政庁に対し一定の行政処分の作為を求める訴訟は、三権分立の建前から原則として許されないものであって、特許出願から特許権の設定の登録に至るまでの手続を詳細に定めた特許法の諸規定をみると、本件訴えのように特許をすべき旨の査定又は特許権の設定の登録を求める訴訟が許されないことは明らかであり、本件訴えは不適法である。

なお、前記のとおり、本件特許出願については、被告の行った出願不受理処分が確定しているのであるから、原告の主張は理由がない。

二、右のとおり、本件訴えは不適法であるから、これを却下する。

(一宮和夫 足立謙三 長谷川浩二)

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